先日 高校時代の友人Mと久しぶりに会った。
雰囲気のいい店で
近況などを話しながらしばらく時間を費やした。
ひととおり話をすませると
一瞬の沈黙が僕たちを支配した。
彼は僕にこんな話を始めた。
好きな女がいた。
口数の少ない、綺麗な眼をした女だった。
最初は軽い気持ちだったが
女のその淋しげな瞳に次第に惹かれるようになった。
この女を大切にしたい、といつか思うようになった。
女も彼を必要だと思っていた。
彼のやさしさに触れていくうち、
自分の中に生きていく力を
感じることができるようになっていた。
そんな日々が続いた。
彼女からの連絡はいつからか途絶えるようになっていた。
「大切な友人ができたの。」
彼女は彼と共有する時間より
友人と共有する時間を優先するようになっていた。
ある日彼女は彼との会話の中で、こう呟いた。
「夕べね、あの友達の所に帰るときね、」
僕は彼の話を聞きながら、敗北という言葉を想像していた。
「辛いね」
一本の煙草に火を付けながら、僕は彼に云った。
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